ノルウェイの森

村上春樹「ノルウェイの森」が1千万部突破という記事の冒頭、、

村上春樹さんが87年に発表した長編小説「ノルウェイの森」(上下巻、講談社)の発行部数が、5日の増刷分で1千万部を突破する。

というところを読んで、もう22年も前の小説なのか、とため息をついてしまった。

私がこの小説を最初に読んだのは1995年の春だった。当時いろいろな事があって、ふと図書館で何かに導かれるようにこの本を借り、他のすべてを投げた状態で一心不乱に読みふけったことを覚えている。次の日に下巻を読み終えた後、とてつもなく混乱し、嘆き、苦しんだことを昨日のように思い出す。19歳の自分にとって、この小説の中で書かれていることは、重くてとても受け入れがたいものであった。クライマックスで「レイコさん」と「僕」が語り合うシーンは、一つ一つの言葉が心に深く刺さり、最後の電話を掛けているシーンを読み終えた直後、思わず(自分の立ち位置がわからなくなって)周りを見渡してしまったほどである。


この小説、ベストセラーではあるが評価の分かれる作品ではないだろうか。私自身も、この小説が好きかと問われれば、「YES」とはとても答えがたい。次に読んだ「国境の南、太陽の西」と共に、読む人の心に大きな穴を開ける作品だし、主人公が背負っているカルマが、自らにも当てはまると気が付いた瞬間にますます救いようの無い気持ちに陥るからだ。当時、これほど救いようの無い気持ちにさせる作品に何の意味があるのだろう、と思ったのだが、今でもふと出先で本屋に立ち寄った時に手にとって何ページか読んで見ることがある。

これを読んで、学生時代を思い出す時、同時に普段目を逸らしているいろいろなものに、否応なく向きあわさせられる。いろいろなことを考え、いろいろな人を想い、いろいろな自分に気が付かさせられる。そんな深さが、この小説の人気の原因じゃないかと思う。