冬の有明方面アフターレポートを読んで

冬の有明方面アフターレポートが公開されていた。

そもそもこのイベントを知ったのは、幕張を追い出されて危機に面している、というのを何かの雑誌で読んだころだったから、今から18年も前の話である。その時は漫画のイベントである、という認識だったので、特に興味はなかったのだが、表現の自由との関係でいろいろと考えたことを覚えている。

サークル参加するようになってから5年以上が経過したが、この間、どんどんメジャーなイベントになってきたように思う。昔は3日間で35万人以上が集まるのに一切報道されないイベントだったわけだが、今ではテレビなどで通常のニュースとして扱われるようになった。

私は評論系のサークルを中心に見てまわっているのだが、毎度毎度、これだけ多様な表現がなされていることにいつも深い感動を覚える。ここしばらく毎回買いに行っているサークルが出している「イグノーベル賞ファンブック」などその典型だ。これは、イグノーベル賞を受賞した科学者に対してメールでインタビューを行い、その結果を載せているものである。これを読むと、受賞者が皆一様にイグノーベル賞の受賞を名誉なことと捕らえており、この賞の存在がとても有意義であるであると考えていることがわかる。また、「これまでに日本から取材がありましたか?」という質問もあるのだが、これまでインタビューした人のうち、1人だけしか日本からの取材はなかったようである。

日本でのイグノーベル賞の取り上げられ方はどうだろうか。マスコミ報道などを見る限り、ネタ的研究の風刺、というように捉えられている面が強いのではないかと思う。ところが、受賞者たちは(この賞に)たとえそういう面があるにせよ、科学という見地からとても良いことである、と考えている。『弾力性のあるシートが張力のもとで皺がよることについて』で受賞したサンチァゴ大学のEnrique Cerda Villablancaは、インタビューに、

イグノーベル賞は素晴らしいアイデアだと思います。我々は学究の徒として、科学はシリアスかつミステリアスだという印象を感じています。研究課題はどこにでもあります。我々の日常生活には、「どう使えば良いか」を知っていても、「なぜそうなるのか」を科学的に説明できない物がたくさんあります。科学の研究者は、良い科学とはクォークブラックホールのような物ばかりに注目するものではないことを理解しなくてはいけません

イグノーベル賞ファンブック Vol3より

と答えている。これには唸ってしまったし、実際のインタビューに基づいて取り上げた既存メディアが皆無という点、そしてそれを個人で取材して纏め上げて本にするという行為、それを許容する場について、いろいろと考えさせられた。

アフターレポートを読むと物理的な戦いや、規制等の問題を抱えている状況がますます油断ならなくなっているようだが、この多様な表現発表の場が続いて欲しいと改めて思った。