拒絶空港

拒絶空港

先日の出張中に、神保町の書泉グランデで買った本。全日空B747-400の機長を勤めておられた内田氏による小説。CDG発のNI206便のタイヤがバーストし、対応策が検討されているところに放射性物質が持ち込まれているとの情報が入り、着陸できる空港が無くなってしまう話。

前作の査察機長は爽やかな読了感だったが、本書は後味の悪さが残った。この後味の悪さは、現役の機長らが感じているものを表現したからなのではないかと思う。運行統制本部のエリート意識、機上と地上の意識のずれ。そういったものを表現したかったのではないかと思う。

意味深なのは、最後の放射性被爆についての懸念を、安全推進室の岡部氏が朝霧機長に対していえないところ。現実の運行乗務員は宇宙線被爆について危機感を持っており、その点に関する会社側対応について不満を持っている。その点を表現したかったのではないかと思った。
http://www.jalcrew.jp/jca/public/ucyusen.htm

実際、内田氏はこの本が7月に出版された後、2006年12月6日に前立腺ガンで66歳で亡くなられている。組織の中で働く人間模様を、リアルに描き出す氏の作品に魅力を感じていただけに大変残念だ。